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『マーケティングとは「組織革命」である。』書評:下からの組織改革にはマーケティングの方法論が不可欠!

こしば
こしば
『マーケティングとは「組織革命」である。』ってどんな本なの?
しばけん
しばけん
この記事ではその内容を解説するよ!

USJを再建させ、根強いファンの多いマーケターである森岡毅さんの新刊が話題となっています。
それが、『マーケティングとは「組織革命」である。』です。
この記事では、

  • 著者の森岡さんはどんな人か
  • 何をテーマにしているか
  • 過去の本との違いはどこか
  • どんな人におすすめの本か

を解説していきます!
「この本が気になっているけど、買おうか迷ってる…」という人はぜひ参考にしてみてください!

本書の内容:「社内マーケ」術で個人も組織も成長する!

著者の森岡毅さんてどんな人?

こしば
こしば
森岡さんってどんな人なの?
しばけん
しばけん
USJをV字回復させた凄腕マーケターだよ!

著者の森岡毅さんは、2010年にP&Gを退社してUSJに入社後、数々の改革を実行してUSJをV字回復させたことで知られるマーケターです。
その最大の改革は、USJのブランド戦略を「ハリウッド映画にこだわったテーマパーク」から、「世界最高のエンターテイメントを集めたテーマパーク」へと変えたことです。
ハロウィンナイトイベントの導入、『新世紀エヴァンゲリオン』や『進撃の巨人』などの人気コンテンツとのコラボ、そしてハリーポッターエリアのオープンにより、USJの業績は飛躍的に向上しました。

USJの現在の売上は、ディズニーシーをも凌ぐほどまでに至っています。

森岡さんのマーケティング手法の特徴は、確率統計を用いた戦略理論にあります。
P&Gに時代に磨いた数字から勝機を見出すマーケティング手法により、再現性のある成功を果たしてきたのです。
その手法を詳しく解説した『確率思考の戦略論』も多くの経営者から高い評価を得たベストセラーとなっています。
そんな森岡さんは、2017年にUSJを退任し、今では「マーケティングで日本を元気にしたい」という大義の下、マーケティング精鋭集団「刀」を経営しています。

森岡毅さんの考えるマーケティングとは?

こしば
こしば
とてもすごい人なんだね!ところで、そもそもマーケティングって何?
しばけん
しばけん
「市場価値を創造する仕事全般」と森岡さんは定義しているよ!

著者は狭義のマーケティングと、自身の唱えるマーケティングとを区別しています。
狭義のマーケティングとは、「販促プロモーションの仕事」です。
宣伝広告や価格施策により、いかに商品を宣伝するかがその仕事と考えられています。

狭義のマーケティングが蔓延している会社の特徴は、マーケティング戦略の下で商品開発が機能していないというものです。
本来は商品開発の時点で消費者の方を向いていなければいけないのに、マーケティング部と商品企画部が独立していて、消費者が本当に求める商品が届けられていない。
ここに狭義のマーケティングを行っている会社の問題点であると著者は言います。

一方で、著者はマーケティングを「市場価値を創造する仕事全般」と定義しています。
これは先ほどの定義に比べ、かなり広範な領域を占める定義です。
宣伝広告や価格施策といった、”いわゆるマーケティング施策”も、この定義ではマーケティングの仕事の一部に過ぎません。
マーケティングとは、”市場価値を創造する”という、会社の存在理由に等しい仕事なのです。

本当のマーケティングは、マーケティング部を遥かに超越しているということです。マーケティングの考え方は、営業部も技術部も人事部も、会社員が頭に入れておくべき概念です。マーケティングは市場価値を創造する仕事、つまり会社の存在理由とほぼ同じ輪郭を持つのですから当然です。

タイトルの「マーケティングとは組織革命である」の意味とは?

こしば
こしば
「マーケティングとは組織革命である」ってどういうことなの?
しばけん
しばけん
マーケティングが機能する会社を作るには、組織全体を改革する必要があるということだよ!

著者は企業組織の持つ主要機能は四つであると宣言しています。
それは、次の四つです。

  • ①マーケティング機能=売上を獲得する機能
  • ②ファイナンス機能=お金を管理する機能
  • ③生産マネジメント機能=商品を継続的に生み出し続ける機能
  • ④組織マネジメント機能=「人」と「人をより生産的に働かせる仕組み」を最適化する機能

①~③が会社業績に直結し、それらを支えるのが④という関係です。
“マーケティングが機能する会社”とは、①~④それぞれが連動しながら、全社的に消費者視点で動ける会社です。
それを実現するためには、”マーケティング部”だけに改革を促すのではなく、会社内の全組織とそれらを動かす仕組みごと変えなければなりません。
そのため、会社にマーケティング革命を起こすことは、「組織革命」を起こすことに等しいのです。

マーケティング革命とは組織革命である。

「成功のための社内マーケ術」とは?

こしば
こしば
マーケティング革命って大変なんだね!そういえば、帯にある「成功のための社内マーケ術」って何?
しばけん
しばけん
この本の主題でもある社内で提案を通すためのマーケティング術のことだよ!

この本の主題は、「一人でも会社に変化は起こせる!」というものです。
本の構成も、
はじめに「一人でも変化は起こせる!」が主題の提示
第一部「組織に熱を込めろ!」が経営者視点での組織作りの方法論
第二部「社内マーケティングのススメ」が社員視点での組織変革の方法論
第三部「成功者の発想に学べ!」が著者と有名経営者との対談
となっています。

第一部はこれまでの著書に見られる内容も多く、またはじめにや帯の文言からも、この本は第二部に力点を置いて作られたものと言えるでしょう。
その内容が、「組織を個人の立場から変革するのに、社内マーケティングを活用せよ」というものです。
通常、マーケティングは会社の外にいる消費者へ価値を届けるために用いられるものです。
しかし、社内で自分の提案を通すことを考えたとき、必要な思考法はマーケティングのそれと一致します。
社内が市場、提案を通したい上司を顧客、自分の提案を商品とみなして売り込んでいくと考えるのです。

渾身の提案がにべもなく却下されたとき、「なんで!非合理的だ!」とあなたは理不尽さに怒りを覚えるかもしれません。
けれど、あなたの提案がいくら正しく見えようと、決定権者にとってそれが正しいとは限りません。
自分の所属する部署の売上を上げるかもしれないが、それが他部署の売上を落とし、組織全体としては売上にマイナスの影響がある。
上司がそう判断したら、提案を却下することこそが合理的になります。
こうした視点の食い違いに気づかないままいくら提案をしても、採用されることはありません。

この本で推奨されているのは、次のフレームワークを使って消費者目線の提案をすることです。

  • ①組織文脈の理解:まずはゲームのルールを理解する!
  • ②目的:勝つ確率の高い戦いを設定する!
  • ③WHO:ターゲットは実は二つある!
  • ④WHAT:便益も二つそれぞれを明確にする!
  • ④HOW:言いたいことを相手が聴きたいように話す!

本書には、権限を持たない一個人が組織で提案を通すための具体的な方法が書かれています。
「どうしてもこの提案を通したい!」という人は、ぜひ本書を実際に手に取ってみてください。
その詳細な手順が書かれています。

補足:ミクロの合理性とマクロの合理性は一致しないことがある!

しばけん
しばけん
ミクロの合理性とマクロの合理性のが一致しないことがあるという「合成の誤謬」は覚えておくと便利!

個人の合理性と組織の合理性が一致しないという事例を考えるには、経済学の合成の誤謬という概念が役に立ちます。
それは、「ミクロの視点では正しいと思われた行動も、マクロの視点では全体の不利益になることがある」というものです。
例えば、徳川吉宗の緊縮財政がマクロでは経済活動を後退させてしまったことが例に挙げられます。
他にも、豊作の年に農家が農作物を廃棄するのも、一見非合理的に見えて、農産物の価値を落とさないための合理的な行動(=合成の誤謬を回避している)と言えるでしょう(交付金の関係もありますが、それは割愛)。
「自分の考えは正しいように思えるけど、偉い人はどうしてそれを採用しないのだろう?」
と不思議に思ったら、自分の施策がマクロ単位では合成の誤謬を招いてしまわないか考えることが大切です。

この本はこんな人におすすめ!

こしば
こしば
内容はなんとなくわかったけど、どんな人に役立つ内容なの?
しばけん
しばけん
社員の行動を変えたい経営者、組織を変えたい社員におすすめだよ!

上にも書いたように、この本は経営者視点での組織作りの方法論社員視点での組織変革の方法論が主な内容となっています。
そのため、「森岡さんがUSJを再建した時のエピソードが知りたい!」「森岡流マーケティング術を勉強したい!」という人は、著者の過去の本の方が適しているでしょう。
この本は、以下のような悩みを持っている方におすすめです。

こんな人におすすめ!

◆経営者
集団知を活かす方法を知りたい
会議が非生産的・非効率的なのを改善したい
社員の自主的な成長を促す人事制度を作りたい
◆社員
自分の提案が何故か通らない理由を知りたい
上司に”刺さる”プレゼン資料を作りたい
惜しい提案をする部下に「どんな提案をすべきか」を教えたい

この本は、「組織を変えたい!」という問題意識を持つ組織人が、変えるための具体的なアクションを取れるようになる本となっています。
「自分の力で組織を変えるんだ!」という熱い想いを持つ人は、ぜひ『マーケティングとは「組織革命」である。』を実際に読んでみてください!